借金の時効はいつからカウントされるか
1 民法改正
時効に関する民法の規定は2017年に改正され、2020年4月1日に施行されています。
本稿執筆時においては、改正民法の施行から4年以上が経過していますので、本稿では改正後の規定を前提としてご説明します。
2 民法の規定
民法166条1項は、「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」とし、1号で「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。」、2号で「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。」と規定しています。
借金の時効の場合、履行期限等は金銭消費貸借契約で定めることになり、その期限が到来すれば、「債権者が権利を行使することができることを知った」と言えますので、適用されるのは主に1号ということになります。
3 初日不算入の原則
民法140条本文は、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。」と規定しています。
これを初日不算入の原則と言います。
借金の返済期限が5月31日の場合、この初日不算入の原則により、消滅時効期間は6月1日から進行します。
4 ケース1
100万円を、毎月末日に10万円ずつ返済する約束で1月1日に貸し付けた場合、1月31日に最初の10万円の返済期限が到来しますので、この10万円については2月1日から消滅時効期間が進行します。
次の10万円は2月28日(うるう年ではないとします)に返済期限が到来しますので、3月1日から消滅時効期間が進行します。
3回目以降も同様に考えることとなります。
5 ケース2
ケース1で、返済が2回分遅れたら当然に期限の利益を失うという約定があった場合、最初の10万円については2月1日から、次の10万円については3月1日から消滅時効期間が進行しますが、1月末分も2月末分も一切返済しなかった場合、2月28日の経過により2回分遅れたことになり、残りの80万円についても期限の利益を失いますので、この80万円についても3月1日から消滅時効期間が進行します。
金融業者からの借り入れについては、通常、期限の利益喪失についての条項がありますので、消滅時効期間は、期限の利益を喪失した時点から進行すると考えることになります。
なお、期限の利益を喪失した後に一部弁済を行った場合、債務承認になりますので、その時点で時効期間はリセットされ再度0から進行することになります。