時効と代位弁済
1 借入金の時効
例えば、A消費者金融と極度方式の継続的金銭消費貸借契約を締結したとします。
極度方式とは、極度額の範囲内で何度でも借り入れができる方式です。
極度額いっぱいまで借り入れ、返済して枠が空くと再度借り入れていたものの、多重債務となって返済が厳しくなり、2020年3月25日の返済期限の返済を怠った場合(この時点の元金残高を45万円とします)、消費者金融は、通常、1回でも返済が遅れた場合は当然に期限の利益を喪失する旨を契約で定めていますので、同日に返済をしないと、期限の利益を喪失し、元金残高の45万円、未収利息(2020年3月25日までに発生している約定利息)および期限後の遅延損害金を一括で支払わなければならなくなります。
この場合、借入金全額の消滅時効は返済期限の翌日である2020年3月26日から進行することになります。
なお、借金の消滅時効について、最終取引日から進行すると勘違いされている方もいらっしゃいますが、正しくは返済を怠った返済期限の翌日となります。
ただし、最終取引日がいつだったのかという情報は、消滅時効完成の可能性を判断するうえで一つの情報になります。
2 保証会社が存在する場合
銀行のカードローンについては、消費者金融やクレジットカード会社が保証会社となっていることが通常です。
例えば、三菱UFJ銀行のカードローンを契約する際は、その保証会社であるアコムと保証委託契約を締結することになります。
この銀行カードローンについて、返済を怠り期限の利益を喪失すると、当該銀行は、保証会社に対し、保証会社が銀行に対して負っている保証債務の履行(これを代位弁済といいます)を請求することになります。
銀行からの請求に対し、保証会社が代位弁済を行うと、銀行が有する貸付債権は消滅し、保証会社は借主に対する求償債権を取得することになります。
そのため、銀行カードローンの時効について検討する場合は、この保証会社が取得する求償債権の消滅時効を対象とすることになります。
そして、保証会社が借主に対しこの求償債権を行使できるのは、銀行に対し代位弁済を行ってからとなりますので、例えば2020年3月25日に保証会社が代位弁済を行っていた場合は、この求償債権の消滅時効は翌日である2020年3月26日から進行することになります。
このように、銀行カードローン(カードローンのみならず銀行による貸付全般に当てはまります)については、その時効は保証会社の求償債権について考える必要があり、保証会社による代位弁済という行為が介在するため、保証会社のない消費者金融やクレジットカード会社からの借り入れよりも時効の起算点は遅くなります。