口約束での借金の時効に関するQ&A

文責:所長 弁護士 田中浩登

最終更新日:2024年06月20日

Q借用書がない口約束での借金なのですが、時効はあるのでしょうか?

A

 お金の貸し借りは、法律的には金銭消費貸借契約というものになりますが、この消費貸借について、民法587条は、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。

 つまり、Aさんが貸主、Bさんが借主として、100万円を1年後に返済すると約束してBさんがAさんから100万円を受け取った時点で金銭消費貸借契約は成立します。

 この約束は口約束、すなわち口頭での合意でも問題なく、借用証はあくまで契約成立の証拠となるものにすぎません。

 それゆえ、借用書のない口約束での借金でも、金銭消費貸借契約は有効に成立しており、その貸金返還義務について消滅時効はある、ということになります。

Q口約束のみでの借金の場合、時効援用はできるのでしょうか?

A

 消滅時効は、時効期間の経過のみでその効果が生じるわけではなく、援用という行為が必要です。

 そして、口約束のみでの借金でも時効はありますので、時効期間が経過した場合は、当然に時効援用を行うことができます。

Q口約束での借金について時効援用をする際の注意点はなんですか?

A

 時効援用を検討するきっかけとなるのは、通常、貸主からの返還の催告です。

 この返還の催告に対し、例えば、「今お金がないから3か月後にまとめて返済します」とか、「3万円ずつ20回分割で返済します」などと伝えてしまうと、貸金返還義務があることを承認したことになり、時効は振出しに戻ってしまいます(承認した時点から再度時効期間が進行することになります)。

 そこで、貸主から返還の催告を受けた場合は、ご自身で貸主に連絡することはせず、弁護士等の専門家にまず相談することが大事になります。

 また、時効の援用についても、貸主に口頭で行うことも可能ですが、そうなると時効の援用を行ったという証拠が残りませんので、弁護士等の専門家に依頼し、内容証明郵便を利用して手続きを行うことをお勧めします。

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